【コラム】民事裁判の流れをわかりやすく解説|第6回:判決後の流れと強制執行の手続き

※このコラムは、民事裁判の流れシリーズの第6回です。
前回の記事:第5回 裁判の終わり方―和解と判決―

勝訴しても支払いがなければ? 判決後の手続きと強制執行

裁判所から金銭の支払いを命じる判決が出ても、自動的に相手の預金からお金が振り込まれるわけではありません。相手が任意に支払わない場合には、預貯金や給与などの財産に対する強制執行を検討します。

重要なのは、強制執行は必ずしも判決の確定後に限られないということです。判決に「仮執行宣言」が付いている場合には、確定前でも強制執行できる場合があります。この記事では、金銭支払請求を例に、その仕組みと進め方を解説します。

目次

1 判決の確定と仮執行宣言

判決はいつ確定する?

通常の民事訴訟では、第一審の判決に不服がある当事者は、判決書の送達を受けた日から2週間以内に控訴できます。適法な控訴がなく、控訴期間が経過した場合には、原則として判決が確定します。

ただし、「判決が確定していない=強制執行できない」とは限りません。

仮執行宣言付き判決なら、確定前でも執行できる場合がある

金銭の支払いを命じる判決などには、仮執行宣言が付されることがあります。仮執行宣言付き判決は、確定判決と同様に強制執行の根拠となる「債務名義」の一つです(民事執行法22条)。

例えば、100万円の支払いを命じる第一審判決に仮執行宣言が付いていれば、相手が控訴した場合でも、所定の要件を満たせば確定前に差押えを申し立てることができます。

ただし、執行停止の裁判がされる場合や、控訴審で判決が変更される場合もあります。仮執行を行うかどうかは、リスクも含めて弁護士と検討する必要があります。

弁護士が判決の内容と判決後の対応を相談者に説明するイラスト

2 強制執行を始める前の準備

まず、判決の主文と仮執行宣言の有無を確認し、相手が任意に支払う見込みや保有財産の状況を検討します。必要となる手続や書類は、債務名義と執行方法によって異なります。

  • 債務名義を確認する:確定判決、仮執行宣言付き判決、和解調書など、執行の根拠となる書類を確認します。
  • 必要書類を準備する:執行文や送達証明書、確定証明書などが必要になる場合があります。執行文が不要な例外もあります。
  • 差し押さえる財産を特定する:預貯金、給与、不動産など、回収可能性と費用を比較します。

「執行文」は、一定の場合に債務名義の正本に付され、執行力を証明するものです。すべての強制執行で必ず必要になるわけではありません。また、債務名義の送達など、執行開始に必要な要件にも注意します。

3 強制執行にはどのような方法がある?

金銭の回収を目的とする場合、主な方法として預貯金債権や給与債権の差押え、不動産競売などがあります。どれが適切かは相手の財産状況によって異なります。

預貯金の差押え

相手が銀行に対して持つ預金債権を差し押さえる方法です。申立てには、差押えの対象となる金融機関や支店などを適切に特定する必要があります。

差押命令が第三債務者である金融機関に送達されると、差押えの効力が生じ、対象となった預金債権について支払が制限されます。ただし、口座に残高がなければ回収できず、将来入金される預金を当然にすべて差し押さえられるわけでもありません。

給与の差押え

勤務先が判明している場合には、相手が勤務先に対して持つ給与債権の差押えを検討できます。

給与には法律上の差押禁止範囲が設けられており、一般的な金銭債権では原則として給与の一定割合が保護されます。給与額による例外や、養育費等の請求で扱いが異なる場合があるため、全額を差し押さえられるわけではありません。退職や転職によって回収に影響が出ることもあります。

不動産・動産に対する執行

相手が土地や建物を所有している場合には、強制競売を申し立て、売却代金からの回収を目指す方法があります。ただし、担保権の有無、財産価値、先順位債権者の存在などによって、回収できる額は変わります。

車両などの動産への執行も考えられますが、対象物の価値や執行費用を踏まえた判断が必要です。

4 相手の財産が分からない場合は?

判決を得ていても、相手の預金先や勤務先などが分からなければ、差押えの申立てが難しい場合があります。そのようなときには、事案に応じて次の制度の利用を検討します。

  • 財産開示手続:一定の要件のもとで、債務者を裁判所に呼び出し、財産の状況について陳述させる手続です。
  • 第三者からの情報取得手続:一定の要件のもとで、金融機関などから財産に関する情報を取得する手続です。取得できる情報や申立要件は対象によって異なります。

これらの制度を利用すれば必ず財産が見つかるわけではありませんが、回収の可能性を検討するための手段になります。

弁護士が預貯金や不動産などの財産を調査するイラスト

5 強制執行には費用と時間がかかる

強制執行には、申立手数料、郵便費用、予納金などが必要になります。その額は、債権差押え、不動産競売、動産執行など、手続によって大きく異なります。特に不動産競売では相応の予納金が必要となる場合があります。

また、差押命令が出ても必ず回収できるわけではありません。残高不足や他の債権者との関係などによって回収できないこともあるため、事前に費用対効果を確認することが重要です。

6 弁護士に相談するメリット

判決を得た後も、どの財産を差し押さえるか、仮執行を利用するか、どのような書類が必要かといった判断が必要になります。弁護士に相談することで、債務名義の内容や財産状況を確認したうえで、適切な回収方法を検討できます。

なお、事件の内容や財産の状況によっては、執行よりも任意の支払交渉を優先する方が合理的な場合もあります。

まとめ 判決後に確認すべきこと

  • 判決が確定すれば、原則として強制執行の根拠となります。
  • 仮執行宣言付き判決では、確定前でも強制執行できる場合があります。
  • 預貯金・給与・不動産など、相手の財産に応じて執行方法を選びます。
  • 財産が不明な場合には、財産開示手続や第三者からの情報取得手続も検討します。

裁判で認められた権利を実現するには、判決の内容だけでなく、その後の回収方法を検討することが重要です。

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※本記事は一般的な民事執行手続の説明です。実際の申立要件や必要書類、費用は事案によって異なります。

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