【コラム】民事裁判の流れをわかりやすく解説|第6回:判決後の流れと強制執行の手続き
※このコラムは、民事裁判の流れシリーズの第6回です。
第1回から読む方はこちら→ 第1回 裁判の始まりと全体の手続き
― 勝訴しても支払われないときはどうする? ―
裁判で勝っても、相手がすぐに支払ってくれるとは限りません。
判決は「支払いを命じる」効力を持ちますが、実際にお金が振り込まれるわけではありません。
相手が自発的に支払わない場合は、強制執行(差押え)の手続きをとる必要があります。
この記事では、判決後の流れと強制執行の基本的な仕組みをわかりやすく解説します。
目次
- 1 判決確定までの流れを知っておこう
- 2 判決が確定したらすべきこと
- 3 強制執行とは?
- 4 給与の差押え
- 5 預金口座の差押え
- 6 不動産・動産の差押え
- 7 財産を調べる方法
- 8 強制執行の費用と期間
- 9 弁護士に依頼するメリット
- まとめ
1 判決確定までの流れを知っておこう
判決が言い渡された後も、すぐに効力が生じるわけではありません。
相手が不服を申し立てる可能性があるため、まずは「確定」までの流れを理解しておきましょう。
- 判決言渡し
- 不服がある場合は、判決書の送達を受けた日から2週間以内に控訴できる
- 控訴がなければ、2週間経過で判決が「確定」する
この「確定」をもって、判決は最終的な効力を持つようになります。
原則として、確定後でなければ強制執行の申立てはできません。
2 判決が確定したらすべきこと
判決が確定したら、まずは相手に「任意で支払ってもらえるか」を確認します。
裁判官の説得や判決内容を受けて、自発的に支払うケースもあります。
しかし、何の動きもない場合は、次の手順で進めます。
- 判決正本(または和解調書)を受け取る
- 「執行文」の付与を申請する(裁判所で手続き)
- 相手の財産を調べ、差押えを検討する
執行文とは、裁判所が「この判決に基づいて強制執行をしてよい」という証明を行うものです。
執行文が付与された判決正本は、いわば「差押えの許可証」のような役割を果たします。
3 強制執行とは?
強制執行とは、裁判で勝った当事者(債権者)が、裁判所の力を借りて相手の財産から支払いを受ける制度です。
任意に支払わない相手に対して、法的に強制的な手段を取ることができます。
代表的な方法は次の三つです。
- 給与の差押え
- 預金口座の差押え
- 不動産・動産の差押え
どの方法を選ぶかは、相手がどんな財産を持っているかによって変わります。

4 給与の差押え
相手が会社員などの場合、勤務先を通じて給与を差し押さえることができます。
毎月の給与から一定額(手取りの約4分の1程度。ただし一定額までは生活費として保護)を天引きし、直接債権者に支払われる仕組みです。
ただし、勤務先が変わったり、相手が退職したりすると差押えは終了します。
また、全額を差し押さえることはできません。
5 預金口座の差押え
最も一般的なのが、相手の銀行口座の差押えです。
相手の銀行名・支店名・口座名義を特定して、裁判所に申立てを行います。
差押命令が発令されると、銀行はその預金を凍結し、回収手続が進みます。
ただし、残高がなかった場合や、別の金融機関に口座を移している場合は実効性がありません。
そのため、相手の取引銀行を把握しておくことが非常に重要です。
6 不動産・動産の差押え
相手が不動産を所有している場合は、土地や建物を差し押さえることも可能です。
その後、競売にかけて売却代金から回収します。
ただし、手続きが複雑で時間もかかるため、弁護士に依頼するのが一般的です。
また、車や貴金属などの動産も差押え可能ですが、費用対効果の点で限定的です。
7 財産を調べる方法
強制執行を行うには、相手がどこに財産を持っているかを把握しておく必要があります。
一般の人が独力で調べるのは困難なため、「財産開示手続」を利用します。
これは、裁判所が相手方を呼び出し、宣誓の上で財産の内容を申告させる制度です。
虚偽の申告や出頭拒否には罰則があるため、実効性のある手段といえます。
8 強制執行の費用と期間
強制執行にも費用がかかります。
郵券や予納金(執行官の日当など)が必要で、数千円から数万円程度が一般的です。
期間は、申立てから実際の回収まで数週間から数か月以上かかる場合があります。
相手の財産状況によっては、複数回にわたって申立てを行うこともあります。
9 弁護士に依頼するメリット
強制執行の手続きは、専門的で煩雑です。
相手の財産調査から申立書の作成、裁判所とのやり取りまで専門知識が求められます。
弁護士に依頼する主なメリットは次のとおりです。
- 財産の特定や開示請求のノウハウを持っている
- 費用対効果を踏まえた最適な執行方法を選べる
- 書類作成や申立て手続きをすべて任せられる
- 相手との交渉・連絡を直接行う必要がなくなる
特に、判決から時間が経過している場合や、相手が財産を隠している疑いがある場合は、専門家の関与が不可欠です。

まとめ
裁判で勝っても、実際にお金を受け取るまでは安心できません。
強制執行は、「勝訴を実現させるための最終手段」です。
覚えておくべきポイントは次の三つです。
- 判決が確定してから執行手続きを進める
- 相手の財産情報をできるだけ集めておく
- 必要に応じて弁護士に依頼する
判決後の対応を怠ると、せっかくの勝訴も意味を失ってしまいます。
最後まできちんと手続きを踏み、確実に権利を実現させましょう。
※本記事は、一般的な法的手続の流れを説明したものであり、個別の事案についての法的助言を行うものではありません。
事案の内容によって必要な対応は異なりますので、実際の手続を行う際は、弁護士などの専門家にご相談ください。


