【コラム】民事裁判の流れをわかりやすく解説|第4回:第1回口頭弁論期日とは?

※このコラムは、民事裁判の流れシリーズの第4回です。
第1回から読む方はこちら→ 第1回 裁判の始まりと全体の手続き

― 当日の流れと注意点をわかりやすく解説 ―

裁判所から「第1回口頭弁論期日」と書かれた呼出状が届くと、不安に感じる方が多いと思います。
「何を話すのか」「行けないとどうなるのか」「弁護士がいないといけないのか」など、疑問も多いでしょう。
この記事では、初めて裁判に関わる方にもわかるように、第1回口頭弁論期日の流れと注意点を整理して解説します。

目次

1 第1回口頭弁論期日とは?

第1回口頭弁論期日とは、民事裁判で最初に開かれる正式な期日のことです。
裁判官の前で、原告(訴えた側)と被告(訴えられた側)がそれぞれの立場を示し、今後どのように裁判を進めるかを決める重要な手続きです。

「弁論」という言葉から難しい議論を想像する方もいますが、実際には数分から10分程度で終わることが多く、当事者が長く話す場面はほとんどありません。

2 どんなことをするのか

第1回口頭弁論期日で行われる主な内容は、次のとおりです。

  • 当事者(または代理人)の出席確認
  • 原告が訴状の内容を簡単に確認
  • 被告が答弁書で「請求を争う」かどうかを明示
  • 裁判官が次回以降の進行方針(書面提出の方法や期日)を決定

実際には、すでに訴状と答弁書で主張が提出されているため、口頭で詳しく説明する場面は多くありません。

3 被告が欠席しても大丈夫か

第1回口頭弁論期日に出席できなくても、答弁書を提出していれば、欠席しても差し支えありません。
答弁書が提出されていれば、「請求を争う意思がある」と見なされ、裁判は次の段階に進みます。

もっとも、答弁書を出さずに欠席すると、「欠席判決」となり、相手の主張がそのまま認められてしまう可能性があります。
やむを得ず出席できない場合でも、期限内に必ず答弁書を提出し、念のため裁判所に連絡を入れておくと安心です。

4 出席する場合の服装と持ち物

出廷するときの服装は、特別なスーツである必要はありません。
清潔感があり、落ち着いた服装であれば十分です。ジーンズや派手な服装は避け、ビジネスカジュアル程度を目安にするとよいでしょう。

持ち物としては、次のようなものを用意しておくと安心です。

  • 裁判所から届いた呼出状
  • 訴状・答弁書などのコピー
  • メモと筆記用具
  • 身分証明書

呼出状には、「何時に」「どの法廷に」出頭するかが記載されています。
裁判所の建物は広いことが多いため、初めて行く場合は15〜20分ほど早めに到着しておくと、落ち着いて行動できます。

※期日呼出状のイメージ
期日呼出状のイメージ

5 裁判官とのやり取りのイメージ

口頭弁論期日では、裁判官が進行をリードします。
お互いの主張を整理し、今後の予定を確認する場だと考えておくとよいでしょう。

典型的なやり取りの一例は、次のようなイメージです。

裁判官:「被告の方は、原告の請求を争うということでよろしいですか。」
被告または弁護士:「はい、争います。」
裁判官:「それでは、次回の期日は○月○日に設定します。」

このように、手続自体は淡々と進行します。
必要以上に緊張する必要はなく、裁判官の指示に従って落ち着いて対応すれば問題ありません。

6 弁護士が代理してくれる場合

弁護士に依頼している場合、本人が出廷する必要はほとんどありません。
代理人として弁護士が出席し、発言や手続を代わりに行います。

もっとも、事件の内容によっては、裁判官が本人尋問や本人からの説明を求める場面もあります。
そのような可能性も踏まえ、事前に弁護士とよく打ち合わせをしておくと安心です。

7 第1回口頭弁論期日の後はどうなるか

第1回口頭弁論期日が終わると、裁判は「弁論準備手続」という段階に進むのが一般的です。
ここでは、お互いの主張をさらに整理し、どの部分が争いになっているのかを明確にしていきます。

必要に応じて、証拠の提出や証人尋問といった手続に進みます。
この時点で、裁判官から「和解で解決できないか」と提案されることも少なくありません。
話し合いで解決できる見込みがあれば、早期の和解を選ぶことも有力な選択肢となります。

8 注意しておきたいポイント

期日を忘れないこと
 呼出状に記載された日時は厳守する必要があります。
 やむを得ず欠席する場合は、事前に裁判所へ連絡を入れましょう。

発言は落ち着いて簡潔に
 裁判官に聞かれたことだけに簡潔に答えれば十分です。
 感情的にならないよう意識しましょう。

録音・撮影は禁止
 法廷内での録音・撮影は法律で禁止されています。
 スマートフォンの電源も切っておきましょう。

和解の提案があっても即答しない
 その場で判断できない場合は、「弁護士と相談します。」又は「検討の上、追って回答します。」と伝えれば問題ありません。

まとめ

第1回口頭弁論期日は、裁判の本格的な議論が始まる前のスタート地点です。
この段階で勝敗が決まるわけではなく、今後の手続の方向性を確認する場だと考えるとよいでしょう。

大切なポイントは、次の三つです。

  • 期日を守ること
  • 答弁書を期限内に提出しておくこと
  • 弁護士と連携し、冷静に対応すること

裁判は「争うための場」というよりも、「事実を整理し、適切な解決に導くための場」です。
必要以上に不安になりすぎず、正しい準備と落ち着いた対応で臨むことが大切です。
※本記事は一般的な解説であり、個別の事案については必ず弁護士へご相談ください。

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