【コラム】民事裁判の流れをわかりやすく解説|第2回:相手を訴えたいときの手続きと費用

このコラムは、民事裁判の流れシリーズの第2回です。
第1回から読む方はこちら→ 第1回 裁判の始まりと全体の手続き

― お金やトラブルを法的に解決するために ―

「お金を返してくれない」「契約を守ってくれない」「話し合いで解決できない」──。
そんなときに思い浮かぶのが「裁判を起こす」という選択肢です。
しかし、実際にどのように手続きを進めるのか、費用や期間はどのくらいか、初めての方にはわかりにくいものです。

この記事では、訴える前に押さえておきたい民事訴訟の基本と注意点をわかりやすく紹介します。

目次

1 裁判を起こす前に確認したいこと

裁判は、最終的な法的手段です。
いきなり訴状を出す前に、次のような対応を試みておくとよいでしょう。

  • 内容証明郵便で請求する
  • 話し合い(示談)を試みる
  • 調停を申し立てる

それでも解決しない場合に、裁判(民事訴訟)を検討します。
裁判は時間も費用もかかるため、「どの程度の証拠があるか」「費用に見合うか」を事前に整理しておくことが大切です。

2 訴えるには何をすればいいか(訴状の提出)

相手を訴えるための最初のステップは、訴状を裁判所に提出することです。
訴状には次のような内容を記載します。

  • 相手(被告)の氏名・住所
  • 請求の趣旨(例:「金〇〇円を支払え」「建物を明け渡せ」)
  • 請求の原因(なぜ被告に支払義務があるのか)
  • 証拠の一覧(契約書・領収書・メールなど)

訴状の作成には、民事訴訟法などで定められた一定の形式があります。
ただし、裁判所によっては独自の書式や提出部数、添付書類のまとめ方などの細かな指定をしている場合もあります。
提出前に、担当裁判所のホームページや窓口で確認しておくと安心です。

なお、訴状のひな形や書式は、裁判所の公式ホームページで公開されています。
裁判所|民事訴訟で使う書式

訴状を作成する女性

3 どこの裁判所に提出するのか

原則として、相手の住所地を管轄する裁判所に提出します。
ただし、契約書に「例:『管轄裁判所を〇〇裁判所とする』」と定めがある場合や、特定の法律上の規定がある場合はその限りではありません。
また、原則として請求金額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所が担当します。

  • (例)
  • 50万円の貸金返還請求 → 相手の住所地を管轄する簡易裁判所
  • 500万円の損害賠償請求 → 相手の住所地を管轄する地方裁判所

4 訴訟にかかる費用の目安

訴訟には、主に次の費用がかかります。

  • 印紙代(裁判手数料)
    請求額に応じて印紙代が決まります。たとえば100万円を請求する場合は、約1万円程度です。
    なお、裁判が第1審か、控訴審・上告審かといった段階によっても、印紙代の金額は異なります。
    裁判所|手数料額早見表
  • 郵券(切手)代
    裁判所が相手に書類を送るための郵送料。数千円程度が一般的です。
    なお、被告の人数が増えると、その分送付先が増えるため、収める郵券代も高くなります。
  • 弁護士費用
    事務所によって異なりますが、一般的には「着手金+報酬金」という形です。
    訴訟額が大きい場合や複雑な事件では、報酬金の割合が変動することもあります。
    ※費用の一部を負担してもらえる「弁護士費用特約」が付いた保険を利用できる場合もあります。
    ご自身の自動車保険や火災保険などを確認してみましょう。

    ニライ総合法律事務所の弁護士費用

5 訴訟の流れを理解しよう

訴状を提出すると、裁判所が内容を確認し、相手に訴状が送達されます。
その後の一般的な流れは次のとおりです。

  1. 相手が答弁書を提出(反論)
  2. 第1回口頭弁論で双方の主張を確認
  3. 弁論準備手続(書面でのやり取り)
  4. 証拠調べ・証人尋問
  5. 和解または判決

多くの裁判は、半年から1年ほどで和解または判決によって解決します。
手続きの途中で、裁判官が当事者双方に和解による解決を提案することも多く、
裁判の中で話し合いによって早期に解決するケースも少なくありません。

6 証拠の準備がカギになる

裁判では、「言った・言わない」ではなく、提出された証拠に基づいて判断されます。
まずはご自身で、次のような資料を整理しておくとよいでしょう。

  • 契約書・請求書・領収書
  • メールやLINEのやり取り
  • 銀行振込の記録
  • 写真・録音・メモなど

証拠は多ければ良いわけではなく、主張を裏づける重要なものを選ぶことが大切です。
どの証拠を使うか、どの順番で出すかといった判断は、弁護士と相談しながら進めるのがおすすめです。

7 和解も選択肢のひとつ

裁判というと「勝つか負けるか」というイメージがありますが、実際には和解によって終わるケースも少なくありません。
双方が一定の譲歩をして合意すれば、裁判を早期に終結させることができます。
たとえば「請求金額の一部を支払う代わりに分割払いにする」といった形です。

なお、和解調書は判決と同じ効力を持つため、支払いがなければ強制執行も可能です。

8 弁護士に依頼するメリット

書式の誤りや主張の不足によって、裁判所から補正を求められたり、手続きが長引いたりすることがあります。
さらに、内容に重大な不備がある場合には、訴状が受理されずに却下されてしまうおそれもあります。
不安なときは、提出前に弁護士など専門家に確認してもらうと安心です。

もっとも、裁判の手続きは複雑で、書類作成や期日の管理には専門的な知識が求められます。
弁護士に依頼すると、次のようなメリットがあります。

  • 訴状・証拠の準備をすべて任せられる
  • 勝てる可能性や和解条件を現実的に判断してもらえる
  • 交渉・調停での解決も視野に入れられる
  • 裁判の負担やストレスを軽減できる
  • 相手方と直接やり取りせずに済むため、感情的な対立を避けられる

「裁判を起こすか迷っている」という段階でも、早めに弁護士に相談しておくことで、リスクと費用の見通しを明確にできます。
弁護士に法律相談

「弁護士に相談するのは怖い」「怒られそう」と感じる方も少なくありません。
しかし実際には、「話してみて安心した」「もっと早く相談すればよかった」という声が多く寄せられています。
不安な気持ちのままにせず、まずは一歩踏み出してみてください。

まとめ

裁判は、感情でぶつかる場ではなく、法的なルールに基づいて公平に解決を図る仕組みです。
焦って訴える前に、証拠や費用を確認し、準備を整えましょう。

特に大切なのは次の3点です。

  • まずは内容証明や話し合いでの解決を試みる
  • 訴える場合は、訴状の作成・証拠整理を慎重に行う
  • 弁護士に相談して、見通しとリスクを把握する

一般の方にとって裁判はなじみが薄く、複雑に感じられるかもしれません。
しかし、流れを理解しておけば、落ち着いて対応することができます。
専門家のサポートを得ながら、最も現実的で納得のいく解決を目指していきましょう。

※掲載内容は一般的な解説であり、個別の事案に対する法律相談ではありません。

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