1 休憩時間でも労働時間になる場合がある

 休憩時間は、①労働時間の途中に与えなければならず(労働基準法34条1項)、②一斉に付与しなければならず(同24条2項、ただし、労使協定による例外あり)、③自由に利用させなければなりません(同34条3項)。自由利用ということですから、休憩時間は、労働者が労働から離れることを保障されていなければなりません。したがって、休憩時間は「単に作業に従事していない手待時間は含まず、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間のことであって、その他の拘束時間は労働時間として取り扱うこと」(昭和22.9.13発基17)とされており、名目上、休憩時間であっても、労働者が権利として労働から離れることが保障されていなければ、労働時間としてカウントされ、結果的に労働時間が法定労働時間を超えていれば残業代の対象となります。

 

2 労働基準法上の労働時間とは

 労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。指揮命令下とは、必ずしも具体的に直接命令された事実だけを意味するものではなく、命じられた業務を遂行するために必要不可欠ないし不可分な行為をする時間も含まれます。

 

3 労働から離れることを保障されているとは

 たとえば、昼休憩時間であっても、来客や電話があったら対応することを義務付けられていた場合などは、労働から離れることを保障されているとはいえません(昭23.4.7基収1196号、昭63.3.14基発150号など)。この場合には、名目上は休憩時間であっても、労働時間となります。

そのほか、事業所内で行うことを義務付けられた防護服の着脱などの業務の準備行為(最判H12.3.9 三菱重工事件)、仮眠室における待機と警報への対応が義務付けられている場合のビル管理業務中の仮眠時間(最判H14.2.28 大星ビル管理事件)、マンションの住み込み管理人の待機時間(最判H19.10,19 大林ファシリティーズ事件)なども、労働時間と認められています。

要するに、具体的に作業をしていない時間であっても、使用者からの指示があればすぐに作業をはじめなければならない状態にある場合には、完全に労働から解放されている状態ではないため、労働時間となります。

 

4 自宅待機時間は?

 一方で、自宅で過ごしていても携帯電話を持たされていて何かあった場合にはすぐに出勤・出動しなければならない、いわゆる「自宅待機」などの時間帯は、待機中の過ごし方について強く拘束されている場合でない限り(例えば外出禁止など)、労働時間制を否定されています。(東京地裁平成20年3月27日 大同工業事件など) 

 残業代を請求する場合、ご自分の手待ち時間が労働時間に当たるのか否か、一度、弁護士にご相談ください。