1 国選弁護人って何?私選との違いは?

 国選弁護人と私選弁護人は何が違うのでしょうか。

 ここで豆知識として、弁護士は、職業としては「弁護士」という言い方をしますが、特に被疑者・被告人に関する刑事弁護の委任を受けた場合には、検察官に対応する形で、刑事手続きの中では「弁護人」という言い方をします。

 そのため、正確には刑事弁護を行う弁護士を選任する手続きを取った後、初めて弁護士は「弁護人」になります。

 ここで、国選弁護人とは、読んで名のごとく、国が選任する弁護人の事です。日本の刑事司法手続きにおいては、裁判を受ける場合にすべからく、自身の防御のために弁護人を選任する事が出来ます(憲法37条3項)。

厳密には被疑者段階と、被告人段階で変わってきますが、検察官によって何らかの罪にあたるとして起訴された場合にはその方は被告人と呼ばれ、その段階からは、全件について弁護人が選任されることになっております。

 これに対し被疑者とは、刑事事件を犯したと疑われる方という意味になります。

場合によっては、検察官がそもそも起訴をしない、いわゆる不起訴(正確には起訴猶予処分などもありますが、ここでは簡易な言葉として不起訴と説明します)という判断をした場合には、刑事裁判が開かれないケースもあり、そういった意味で、被疑者の段階では憲法上の弁護人をつける権利の外側にありましたが、2018年6月より、被疑者であっても,勾留されて身体を拘束された事件については全件,被疑者国選弁護の対象となりました。

以上が、国選弁護人がつく「事件」の概略です。

2 私選弁護人とは

私選弁護人とは,国選弁護人と対にある概念で,被疑者・被告人の方が自分(私)で選任する弁護人という意味になります。

自分で選ぶ訳ですから,気に入らない弁護士,信用できない弁護士を就ける必要はありませんし,例えば,自分と似たようなケースの弁護に定評のある弁護士を選任する事などができる事になります。

この点が,やはり一番のメリットといえるでしょう。

また,法律事務所には一人でやられている事務所もあれば,多数の弁護士を抱えている事務所もあり,事務所単位で依頼をすれば,弁護人を数名就けるという事も可能ですので,やはり,事件として争うポイントが多くなる案件や,対応にスピードが要求される案件などは,私選弁護人を選任した方が良いケースが多いと思われます。

逆にデメリットとしては,やはり経済的な面かと思われます。通常,私選弁護は着手金30万円(税別)程度からかかりますので,なかなか簡単に利用することは出来ないかもしれません。

ですが,一生に何度あるものでもない以上,案件や状況によって,検討しつつ決めていただきたいと思うものです。

3 私選弁護人と国選弁護人との違い

国選弁護人と私選弁護人の違いですが、国選弁護人とは、国が弁護人を選任する事になりますので、逮捕された警察署の管轄の弁護士会に対し、選任の申し出が出され、弁護士会の持つ名簿に従って機械的に配点された方が弁護人として選任されることになります。

そのため、被疑者または被告人の方が自分で選ぶ事は出来ませんし、一部の重大事件等を除き、弁護人は一人しか選任されません。

これに対し、私選弁護人とは、自身が直接、弁護人を選ぶことが出来ますので、刑事弁護を得意とする先生かどうか、自分の言い分をしっかり聞き取ってくれる先生かどうかなどの判断をした上で、選任する事が出来、また人数についても複数選任する事も出来ます。

それぞれのメリット、デメリットとしては、国選弁護人は、資力を欠く場合であっても就けてもらえる事から、一番のメリットは経済的な面といえるでしょう。原則は国選弁護人の費用については、税金で負担されるケースがほとんどで、いわば無料で弁護してもらう事が出来ます。

ただ、「原則」という点に注意が必要で、実際には資力を欠く場合でなくても国選弁護人を就ける事が出来るケースも存在する事などもあり、例外的に,裁判官の判断次第で、国選弁護費用を負担させられる場合もあります。

とはいっても、私選弁護人の費用に比べると安いことから、いずれにせよ経済的なメリットは国選弁護人にある事は間違いないでしょう。

また国選弁護人であったら,弁護を十分にしてもらえないのでは?と心配される方に会う事もございますが,実際には刑事弁護をされている先生のほとんどは国選名簿にも登録されておりますし,普段から刑事弁護を頻繁にやられている先生が担当になるケースは十分に考えられるため,国選弁護人であるからといって,絶対に質の低い弁護になるという訳ではありません。

ただ,どの方があたるかはくじ引きのように決まる訳ですから,全く自分とは合わないなと思ったり,話を聞いてくれないなと思っても,裁判所が国選弁護人を変えてくれるケースはほとんどありません。

その点のみが,やはりデメリットであるといえるでしょう。