1 保釈に必要な費用と保釈の流れ

 親族が逮捕されてしまった場合、一番気になるのは、いつ刑務所から出てこれるのかというところだと思います。そして、よくテレビなどで聞く保釈金を●万収めて出てきたという保釈の制度は非常に気になるところだと思います。保釈とはどのような制度で、どのような手続きで進んでいくのでしょうか。

2 保釈とは

 保釈とは、刑事裁判が終わるまでの期間、一時的に釈放される制度のことです。保釈が許可されれば、被告人は、もとの生活を送りながら裁判を受けることができます。また、弁護人との裁判の打ち合わせも容易になります。

 

3 保釈の請求のための準備(起訴後が勝負!)

 保釈は、起訴された後、はじめて請求することができます(刑訴法88条)。起訴前の勾留期間は決まっているので、起訴される日も予想できます。弁護人としては、起訴の可能性がある場合には、捜査段階から、起訴後にできるだけ早期に保釈請求ができるよう準備しておく必要があります。

 

  • 準備その① 身元引受人の確保

保釈が許可されるには、身元引受人の存在が不可欠です。なぜなら、起訴後勾留は、裁判出廷確保のものであることから、被告人が保釈中に所在不明とならないようにするためには、監督する人が必要と考えられるからです。身元引受人は、原則は被告人と同居できる人物とすべきです。普通は、成年していても被告人の父母が身元引受人となることが多いです。しかし、たとえば、事件の被害者が同居家族である場合など、事案によっては、雇用主などに頼むこともあります。

  • 準備その② 保釈保証金の準備

保釈が執行されるには、保釈保証金の納付が条件となります(刑訴法94条1項)保釈保証金の額は、被告人の犯した犯罪の性質や被告人の資力などを考慮して裁判所が決定しますが(刑訴法93条2項)、相場は、150万~300万といわれています。ニュースなどで罪をおかした芸能人が数百万あるいは一千万単位の保釈金を納付したという話を聞きますが、これは、芸能人の資力と事件の与えた社会的影響等によって高額になっているものと、予想されます。

 しかし、150万円程度の保釈金であっても、現金の一括納付が原則です。よって、一般の人にとっては一括納付が容易でない場合がほとんどです。そのような場合には、一般社団法人日本保釈支援協会などによる保釈保証金立替システムを利用することができます。

 

日本保釈支援協会に保釈保証金の立て替えを申し込むことができるのは、被告人以外の関係者です。申し込み後、同協会が審査を行い、審査がおりると、関係者と同協会との間で契約を締結し、担当弁護人のもとに立て替え金が振り込まれます。弁護人が裁判所に振り込まれた保釈金を支払います。

限度額は500万までですが、普通は150万~200万くらいを借りますので、だいたい手数料は3万5000円から4万5000円くらいだと思ってください。

ただし、保証人の資力が十分でない場合などは、全額の保釈金の借入が出来ず幾らかは自己資金を用意する必要があることがあります。

4 保釈の流れ

 起訴されたという連絡が入ったらすぐに、事務所の弁護士は保釈の申請書類を裁判所に提出に行きます。保釈の請求は、口頭・書面いずれでも可能とされていますが(刑訴規則296条1項)、実務上は保釈請求書を裁判所に提出して行うのが通常です。裁判所は、検察官の意見を聞いて、保釈をするのか否か決定します(刑訴法92条1項)。被告人の犯した罪が重く長期の実刑見込みのため逃亡の恐れがあると判断されたり、被告人が被害者や証人を脅したり口裏合わせをしたりする恐れがあると判断された場合には、保釈が却下されることがあります。特にストーカー事犯や性犯罪事犯においてはこの判断は慎重になされますので、出来れば、早期に示談しておき、かつ被害者に接近しないという誓約書を書いて被害者に示すという事を行ったほうがよいでしょう。

申請から、裁判所の決定が出るまでには、だいたい一日程度かかります。保釈が認められると、警察署に連絡が入り保釈の手続を行い、2時間程度で荷物をまとめて、警察署から被告人が出ていきます。弁護士や親族が迎えに行きますが、この時は弁護士にとっても、本当にうれしい瞬間です。

 

5 保釈後

  裁判官は、保釈の許可にあたって、裁判所が適当と認める条件を付すことができます(刑訴法93条3項)たとえば、住居の制限や旅行する場合の条件などです。

  保釈条件に違反すると、保釈を取り消され、しかも、保釈保証金を没収されることがあります(刑訴法96条1項5号、2項)保釈が取り消されると、勾留の執行力が復活し、被告人は収監されることになります。

 

6 判決後

 一審で、無罪、執行猶予などの判決言い渡しがあったときには、没収されなかった保釈保証金は還付されます(刑事訴訟規則91条1項、刑訴法345条など)。還付には、1週間ほどかかる場合が多いです。

禁固以上の判決の言い渡しがあった場合は、保釈はその効力を失い、被告人が収監されることもあります、その場合であっても保釈保証金は還付されます(刑事訴訟規則91条1項、刑訴法323条など)。弁護人としては、被告人が収監される前に、再保釈の申請をすべきです。再保釈が認められれば、前の保釈保証金の流用も可能です。

7 私選弁護人による保釈

 国選弁護人でも、保釈の手続を行ってくれる弁護人はいます。もっとも、高齢の弁護人であるとか、熱意のない弁護人には、かかる手続を積極的に行ってくれないという事も聞きます。当事務所では、私選弁護人として熱心に保釈申請を行います。県外在住で実刑が予想される被告人について、保釈申請を4回出して、4回目に通ったこともあります。ぜひ一度ご相談ください。

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